近年、年金に不安を感じる人が増え、不動産投資を考えた方が将来的には多いでしょう。
ただ、不動産投資には「リスクが高い」という印象を受ける人もいます。
安くない費用がかかりますが、投資の中では比較的容易なミドルリスク・ミドルリターンの手法です。
この記事では、不動産投資の基本、メリット、リスクについてわかりやすく説明します。
- 不動産投資って何ですか?
- 不動産投資の基本の4種類
- ①区分マンション(ワンルームなど)の経営
- ②マンション・アパートの一棟経営
- ③戸建て経営
- ④駐車場経営
- 不動産投資で利益を得る仕組み
- ① 家賃収入(インカムゲイン)
- ② 売却益(キャピタルゲイン)
- 不動産投資のメリット 6選
- ① 副収入を得られる
- ② 所得税・住民税の節税効果がある
- ③ 貯蓄効果を得られる
- ④ ミドルリスクで長期・安定的なミドルリターンを得られる
- ⑤ 少ない自己資金で始められる
- ⑥ レバレッジ効果により、少ない資金で大きな投資効果を得られる
- 不動産投資のデメリット 4選
- ① 空室リスク
- ② 滞納リスク
- ③ 修繕リスク
- ④売却価格の変動リスク
- 不動産投資に向いている人の特徴
- 十分な資金を持ち、大規模な投資を考えている方:
- 医師や経営者、大企業のサラリーマンなど高所得者の方
- 不動産投資の始め方 5STEP
不動産投資って何ですか?

不動産投資は、アパートやマンションを購入し、人に貸して家賃を得る方法です。特に若い世代が老後のために投資を始めるケースが増えています。 株やFXに比べてハードルは高いかもしれませんが、不動産会社や管理会社に任せて副業感覚で取り組むのが魅力です。
不動産投資の基本の4種類
不動産投資にはさまざまな種類があり、土地を持っているかどうかや初期投資の予算によって選択肢が変わります。
ここでは、これから投資を始める方におすすめの方法を4つご紹介します。
①区分マンション(ワンルームなど)の経営
ワンルームなどの区分マンション経営は、一棟まるごとの経営に比べて少ない資金で始められるため、初心者におすすめです。
一戸建てや一棟経営ほど大きな収益は期待できませんが、複数のエリアに物件を持つことで投資を分散し、リスクを減らすことができます。
②マンション・アパートの一棟経営
マンションやアパートの一棟経営は、建物全体を購入して他人に貸し出す方法です。
自分の土地に賃貸物件を建てて活用する方も多くいます。
一棟経営は、区分マンションよりも貸し出す部屋数が多いため、大きな収益が期待できます。
ただし、初期投資費用や改修費用が高くなる点に注意が必要です。大きなリターンが期待できる分、リスクも高まるため、収支のシミュレーションを行い、綿密な投資計画を立てることが重要です。
③戸建て経営
戸建ての住宅を購入して賃貸に出す方法です。入居者がいる限り安定した家賃収入が得られる点は、他の投資方法と同様です。特にファミリー層の需要が高く、子育て世帯は子どもの通学などを考慮して長期間住む傾向があるため、空室リスクは比較的低いとされています。
ただし、退去後のリフォームや修繕費が高額になる可能性や、次の入居者が決まるまでに時間がかかる場合があることを認識しておきましょう。
④駐車場経営
不動産投資の一つとして、駐車場経営も人気があります。
主に「月極駐車場」と「コインパーキング」の2種類があります。
- 月額固定で駐車料金を徴収する形態で、安定した収益が期待できます。
- 空きが出た場合、収入がなくなるリスクがあります。
- 立地が悪い(需要が低い)エリアでは、契約希望者を見つけにくいことがあります。
- 利用者が時間単位、あるいは料金単位で支払う方式です。
- 交通の便が良いエリアや特別なイベント会場の近くでは、高い収益を上げられる可能性があります。
- 運営には適切なシステムやスタッフが必要です。
- 需要は時間帯や季節によって大きく変動することがあります。
どちらの駐車場経営方法を選ぶかは、投資家の目標や地域の需要によって異なります。
不動産投資で利益を得る仕組み
不動産投資で得られる利益には、大きく分けて「家賃収入(インカムゲイン)」と「売却益(キャピタルゲイン)」の2種類があります。これらの仕組みを理解することが、不動産投資で成功するための重要なポイントです。
① 家賃収入(インカムゲイン)
インカムゲインとは、不動産を保有することで安定して得られる利益のことを指します。簡単に言えば「家賃収入」のことです。
入居者がいる限り毎月家賃収入を得られ、金額が大きく変動することも少ないため、株式投資やFXに比べて景気の影響を受けにくいとされています。
家賃収入からローン返済や経費(管理費・修繕費など)を引いた残りが実際の月間収益となります。
② 売却益(キャピタルゲイン)
キャピタルゲインとは、不動産を購入時よりも高い価格で売却して得られる利益のことです。
たとえば、4,000万円で購入した不動産を4,500万円で売却すれば、500万円の売却益が得られます。
ただし、キャピタルゲインはインカムゲインに比べて景気の影響を受けやすい点に注意が必要です。
景気が後退して不動産価格が下がると、売却益を得ることが難しくなる場合もあります。
キャピタルゲインはインカムゲインよりも大きな利益を得られる可能性がありますが、購入後に不動産の価値が上がるかどうかを見極めるのは簡単ではありません。これがキャピタルゲインのデメリットといえます。
不動産投資のメリット 6選

① 副収入を得られる
不動産投資では、購入したアパートやマンションの入居者から家賃を受け取り、安定した収入を得ることができます。たとえ、購入資金を全額借り入れた場合でも、賃料収入から経費やローン返済を差し引いた後に手元にキャッシュフローを残す仕組みを構築できます。
以下は、1億6,000万円の物件を購入した際のキャッシュフローの一例です。
1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | |
---|---|---|---|---|---|
家賃収入 | ¥14,339,856 | ¥14,268,156 | ¥14,196,815 | ¥14,125,830 | ¥14,055,200 |
実質家賃収入 | ¥13,622,863 | ¥13,554,748 | ¥13,486,974 | ¥13,419,538 | ¥13,352,440 |
運営費 | ¥3,239,953 | ¥3,239,953 | ¥3,239,953 | ¥3,239,953 | ¥3,239,953 |
純営業利益 | ¥10,382,910 | ¥10,314,795 | ¥10,247,021 | ¥10,179,585 | ¥10,112,487 |
元利返済額 | ¥7,278,041 | ¥7,278,041 | ¥7,278,041 | ¥7,278,041 | ¥7,278,041 |
税引前CF | ¥3,104,869 | ¥3,036,754 | ¥2,968,980 | ¥2,901,544 | ¥2,834,446 |
また、賃料収入は毎月安定して入るため、副収入としての効果が非常に高いのが特徴です。
ただし、利回りが低すぎる物件や空室が埋まりにくい立地の物件を選ぶと、安定した副収入を得るのは難しくなる点に注意が必要です。
② 所得税・住民税の節税効果がある
不動産投資では、「減価償却」を活用することで節税効果を得ることができます。
不動産などの資産は、購入時に費用として一度に計上するのではなく、数年にわたって分割して計上する「減価償却費」が認められています。
減価償却費は「実際の支出を伴わない経費」であり、以下のような効果があります:
- 会計上(税金計算の関係):減価償却費を計上することで利益が減少 → 所得税や住民税が軽減される
- 実際のキャッシュフロー:実際の支出はない → 手元にキャッシュが残る
この仕組みにより、節税をしつつ手元のキャッシュを維持することが可能です。
さらに、減価償却費を多く計上して不動産所得を赤字にし、その赤字を本業の所得と「損益通算」することで、本業で支払った税金の一部が還付される場合があります。
このスキームは、本業の所得が高く、所得税率が高い人に特に効果的です。
この仕組みを活用するには、減価償却費を多く計上できるよう「耐用年数が短い物件」を選ぶことがポイントです。
おすすめは、中古の木造アパート(築22年以上)です。
耐用年数が短い物件は、一年あたりの減価償却費が大きくなり、節税効果をさらに高めることができます。
③ 貯蓄効果を得られる
不動産投資では、物件購入時に金融機関から借入を行い、賃料収入から経費や借入返済を行います。この返済のうち、元金部分は貯蓄としての効果を持ちます。
例えば、1億円の物件で元金を3,000万円返済している場合、その物件を1億円で売却すれば、残債の7,000万円を差し引いても3,000万円が手元に残ります。
賃料収入で貯蓄を行い、必要な時には売却して現金化できる、これが不動産投資の貯蓄効果です。貯蓄効果を狙う場合、いざという時に売却しやすく、価格が下落しにくい物件を選ぶことが重要です。
そうでないと、必要な時にスムーズに売却して元金を現金化できない可能性があります。
④ ミドルリスクで長期・安定的なミドルリターンを得られる
不動産投資は、他の投資商品と比べてミドルリスク・ミドルリターンで運用できるのが特徴です。不動産価格の変動は比較的緩やかであり、家賃収入を通じて長期的・安定的なリターンを得られるメリットがあります。
例えば、FXなどは資産がゼロやマイナスになる可能性もありますが、不動産投資はそのリスクが低いとされています。
⑤ 少ない自己資金で始められる
不動産投資は、自己資金が少なくても始められるのがメリットです。
株式投資などでは全額自己資金が必要ですが、不動産投資では金融機関からの借入を利用して物件を購入できるため、自己資金を抑えることが可能です。
一棟アパートの場合、物件価格の1~3割程度の自己資金があれば、残りは融資を受けて購入できます。
⑥ レバレッジ効果により、少ない資金で大きな投資効果を得られる
不動産投資では、借入を活用することで自己資金を抑えるだけでなく、レバレッジ効果によって大きな利益を得ることができます。
例えば、自己資金1,000万円で1,000万円の物件を現金購入するよりも、借入を利用して5,000万円の物件を購入した方が、より大きな収益を得られる可能性があります。
ただし、借入金利が高い場合や利回りが低い物件を選ぶと、逆に損失を被る「逆レバレッジ」の状態になることもあるため、注意が必要です。
不動産投資のデメリット 4選

① 空室リスク
不動産投資の主な収入源は、入居者からの家賃です。
しかし、物件が空室になると家賃収入が得られず、維持管理費やローンの返済だけが発生します。空室が長引くと、収益が減少し、場合によっては赤字になることもあります。空室が埋まらない主な原因は以下の2つです。
- 空室対策の不足:
効果的な募集活動や魅力的な部屋作りができていない場合、入居者が見つかりにくくなります。例えば、募集を行う不動産会社の数が少ないと、入居希望者に情報が届きにくくなります。 - 立地条件の悪さ:
物件の場所が不便であったり、需要が低いエリアにあると、入居者を確保するのが難しくなります。
空室リスクを軽減するためには、物件選びの段階で需要の高いエリアを選ぶことが重要です。特に、三大都市圏やその近郊での物件選びが推奨されます。
また、サブリース契約(不動産管理会社が一括で物件を借り上げる契約)を検討することも可能ですが、収益性が下がる場合やトラブルの事例もあるため、注意が必要です。
② 滞納リスク
入居者が家賃を滞納すると、収入が減少し、ローン返済や維持費の支払いに支障をきたす可能性があります。滞納問題は、空室問題よりも対処が難しく、迅速な対応が求められます。対策として、入居者に保証会社への加入を求める方法があります。保証会社が家賃の支払いを保証してくれるため、滞納が発生しても一定の収入を確保できます。保証料は家賃の30~60%程度で、通常は入居者の負担となりますが、中古物件で既存の入居者に新たに保証会社への加入を求める場合、オーナーが負担するケースもあります。
③ 修繕リスク
建物は時間とともに劣化し、修繕やメンテナンスが必要となります。
予期せぬ高額な修繕費用が発生すると、収益に大きな影響を与える可能性があります。
特に、古い物件や構造上の問題がある物件では、修繕費用が高額になる傾向があります。物件購入前に、一級建築士などの専門家に建物の状態をチェックしてもらい、以下のポイントを確認することが重要です。
- 屋上防水
- 外壁塗装
- 配管設備
- エレベーターの状態
- 耐震性能
これらの要素は修繕費用が高くなる傾向があるため、過去の修繕履歴を確認し、必要な修繕が行われているかをチェックしましょう。
例えば、屋上防水工事が20年間行われていない場合、雨漏りのリスクが高まります。
不動産投資を検討する際は、これらのデメリットやリスクを十分に理解し、適切な対策を講じることが重要です。
④売却価格の変動リスク
不動産投資を行う際、物件の売却価格が変動するリスクがあります。購入時より売却価格が下がると、最終的な利益が減少し、場合によっては損失を被る可能性もあります。
例えば、5,000万円で購入し、利回り8%の物件を6年間保有したとします。
この期間中の総賃料収入は約2,400万円となります。6年後に物件を売却する際、売却価格によって最終的な利益は以下のように変動します。
- 4,000万円で売却した場合:
- 2,400万円(賃料収入) + 4,000万円(売却価格) – 5,000万円(購入価格) = 1,400万円の利益
- 2,000万円で売却した場合:
- 2,400万円(賃料収入) + 2,000万円(売却価格) – 5,000万円(購入価格) = 600万円の損失
このように、売却価格が大きく下落すると、投資全体で損失を出す可能性があります。
売却時の税金について
不動産を売却して利益(譲渡所得)が発生した場合、所得税と住民税が課税されます。この税率は、物件の所有期間によって異なります。
所得税30.63% + 住民税9% = 合計39.63%
所得税15.315% + 住民税5% = 合計20.315%
※上記の税率には、復興特別所得税が含まれています。
所有期間の判定は、売却する年の1月1日時点で行われます。そのため、税率を抑えるためには、実質的に6年間以上保有することが必要です。
- 長期保有による税負担の軽減:
- 前述の通り、物件を6年以上保有することで、長期譲渡所得として税率を抑えることができます。
- 物件の価値維持と向上:
- 日頃から適切な管理を行い、入居率を高め、賃料を適正に設定することで、物件の収益性を維持・向上させます。これにより、売却時に高い評価を得やすくなります。
不動産投資を成功させるためには、購入時だけでなく、保有期間中の管理や売却時の戦略も重要です。市場動向を常にチェックし、適切なタイミングでの売却を心掛けましょう。
不動産投資に向いている人の特徴
- 十分な資金を持ち、大規模な投資を考えている方:
- 不動産投資は、まとまった資金を活用して安定した収益を目指す方に適しています。
- 医師や経営者、大企業のサラリーマンなど高所得者の方:
- 減価償却を活用することで、節税効果を得られるため、高所得者に特におすすめです。
不動産投資の始め方
- 老後に月5万円程度の収入を得たい
- 毎月10万円以上の副収入を趣味に使いたい
- 節税対策を兼ねて運用したい
まずは、不動産投資を始める目的を明確にしましょう。目的によって最適な物件の条件が異なるため、具体的な目標を立てることが重要です。
投資の目的が決まったら、次に必要な知識を身につけましょう。
不動産投資に詳しい会社から情報提供やサポートを受けることも可能ですが、最終的な判断は投資家自身が行います。
書籍やセミナーを活用して、自分で判断できるだけの情報を集めましょう。
不動産投資には、現金での一括購入や金融機関からの融資を利用する方法があります。
サラリーマンの場合、給与所得があるため、借入可能な金額を計算し、自己資金を加えた総額を用意すると良いでしょう。
ただし、不動産投資用ローンは住宅ローンとは異なり、年収だけでなく物件の利回りや家族の資産状況など、さまざまな要素が借入可能額に影響します。
資金の目途が立ったら、物件を購入する不動産会社を選びましょう。
選ぶ際の主なポイントは以下の通りです。
- 実績と評判:
- 過去の取引実績や利用者の声を確認し、信頼性の高い業者を選びましょう。
- 専門知識の有無:
- メリットだけでなく、リスクや問題点の説明も行ってくれるかを確認しましょう。
- 提供サービスの内容:
- 不動産の仕入れから賃貸管理まで一括で行っている業者がおすすめです。管理やメンテナンスのサービス内容も確認しましょう。
- アフターサポート:
- 購入後にトラブルが起きた際、サポートを受けられるかをチェックしましょう。信頼できる不動産会社を選ぶことで、長期的な成功につながります。
不動産会社が決まったら、投資の目的に合った物件を探しましょう。
提示される利回りはあくまで想定であることを念頭に、周辺環境や立地、部屋のタイプなども考慮し、長期的に運用できるかを検討します。
また、「自分が入居者だったらこの物件に住みたいか」という視点で判断することも大切です。違和感を感じた場合は、妥協せず別の物件を探すことをおすすめします。
これらのステップを踏むことで、不動産投資を効果的に始めることができます。
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